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2011.04.01

会社が災害にあったときに使える「税金の特例」で、節税しよう

 災害によって、会社に被害が発生した場合、それを、できるかぎり取り戻すことが、企業再生への近道です。

 もちろん、すべてを元通りに企業再生することは不可能ですが、節税することで、少しでも資金繰りがよくなることもあります。

 もちろん、「災害によって、売上が激減して、会社が赤字ならば、節税の意味はない」と言うかもしれませんが、会社の赤字は、翌年以降7年間の黒字と通算することができます。

 将来の企業再生のためにも、できることは、すべてやりましょう。

 

 また、取引先が災害にあった場合に、できるだけ、速やかに、そして直接的に、企業再生を手助けできるように、お金を出しやすい制度もあります。

 

ここでは、災害にあった会社、それを支援する会社の両方の「税金の特例」を、列挙しました。

 

災害にあった会社が、企業再生するための税金の特例

 

1.災害で滅失したり、損壊してしまった資産

 通常、会社が商品を破棄したり、資産を除去した場合には、その証明書や廃棄処分業者からの領収書が必要となります。それによって、例えば、機械設備を除去したとしても、全額なのか、その一部だけなのか、細かく経費になる部分を判定していきます。

一方、災害のときには、すべてが消滅してしまうこともあり、どこまでが滅失してしまったのか、判断しにくく、証明書も領収書もありません。

そこで、会社が保有している商品や店舗、事務所等の内装が、災害により被害を受けた場合、次のような損失、または費用が経費として認められます。

 

(1)   商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失、

  または、損壊した場合の損失の額

(2)   損壊した資産の取壊し、または除去のための使った費用

(3)   土砂、その他の障害物を除去するために使った費用

 

2.会社が企業再生するために、支出した費用の区分

 固定資産が壊れた場合、それを修復しなければ、会社は売上を獲得することができません。

 修復のために支払ったお金は、その金額や頻度によって、資本的支出となるか、修繕となるかが、判定されます。

 もし資本的支出となれば、固定資産の原価に加算され、減価償却の対象になり、耐用年数に渡って、経費となります。一方、修繕費となれば、支払った期の経費として認められます。

ただ、災害によって被害を受けた固定資産に対して、修復のために支払ったお金が、資本的支出になるか、修繕費となるかの区分は、通常の判定とは異なります。

企業再生を早めるためには、できるだけ、修繕費として、経費計上できる方がよいのです。

 

(1)   被災した固定資産について、その原状回復のための費用は、修繕費

(2)   被災した固定資産の効用を維持するために行う補強工事、排水、

  または土砂崩れの防止等のために支払ったお金は、修繕費とできる

(3)   被災した固定資産に対して支出したお金のうち、資本的支出なのか、修繕費なのか、判断がつかない場合、

  その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とするならば、その処理が認められる

 

もちろん、一気に経費計上すれば、赤字になってしまうこともあります。

ただし、会社の赤字は、翌年から7年間繰り越すことができるので、心配ありません。

3.社員に対する災害見舞金品

 会社が社員に、一定の基準に従って支給する、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどは、交際費として処理されます。

これは、資本金が1億円以下の会社は、交際費が600万円までは、その90%が経費として認められるだけであり、それ以外は、税務上の経費になりません。

そのため、交際費になると判定されると、法人税は増えることになります。

一方、会社が、災害により被害を受けた社員やその親族に対して、一定の基準を作り、それに従って支給する災害見舞金品については、福利厚生費として、全額が経費として認められます。

企業再生のためには、社員の努力とやる気がかかせません。

できるだけ、会社がお金を出しやすい制度になっているのです。

 また、会社が、自分の社員と同じ状況にある専属下請先の社員やその親族に対して、同じように、一定の基準を作り、それに従って支給する災害見舞金品についても、同様に、全額を経費にできます。

 自分の会社だけではなく、グループ会社も企業再生できなければ、部品の調達すらできないのです。

 

4.災害による損失の繰越し

 会社の事業年度が開始する日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金のうち、棚卸資産、固定資産等について、災害により生じた損失がある場合には、青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その欠損金は、経費として認められます。

 

企業再生を支援する側の会社にとっての税金の特例

 

1.取引先に対する災害見舞金

 交際費とは、社員に対してだけではなく、取引先(得意先、または仕入先)や事業に関係のある者に対して行った接待、供応、慰安、贈答をするために支出したお金のことも含まれます。

一方、会社が、災害が発生する前の関係に回復する、またはそれを維持するため、取引先が企業再生できるように支出した災害見舞金や事業用資産の供与は、交際費ではなく、経費になります。

自分の会社は災害に巻き込まれていないが、取引先が、災害に会ってしまう場合に、お金を支出することで、企業再生を助けることにつながるのです。

 

2.災害見舞金にあてるために、同業団体等へ支出する分担金

 会社が所属している同業団体等の構成員が所有する事業用資産が、災害によって、損失が発生した場合には、その損失を補てんするために、構成員相互の扶助等に係る規約による合理的な基準に従って、同業団体等から賦課され、拠出する分担金は、支出したときに、経費になります。

 同業団体での協力が、その業種全体の企業再生に役立つと考えられているからでしょう。

 

3.取引先に対する売掛金の免除

 会社が、取引先の体質が健全にも関わらず、それに対する売掛金や貸付金を免除すれば、寄付金、または交際費となります。

 寄付金の場合には、

       国等に対するもの、指定寄附金‥‥全額経費

       特に公益性の高い団体(特定公益増進法人)に対するもの‥‥損金算入限度額までは経費、それを超える金額はその他の寄附金に含める

       その他の寄附金‥‥一定の限度額までは経費

 となっています。

 取引先への寄付は、③に当たるので、限度額を超えると、経費として認められません。

 つまり、寄付金と区分されれば、法人税が増えることになるのです。

一方、災害を受けた取引先の企業再生を助けるために、会社が、売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、貸倒損失として、全額経費になります。

 また、すでに契約しているリース料、貸付金の利息、割賦代金の減額をする場合、または、災害発生後の取引につき、すでに契約していた取引条件を変更する場合も、同様に、損をした金額があれば、経費になります。

 

4.取引先に対する無利息、または安い金利での貸付

 会社が、災害を受けた取引先の企業再生を助けるために、無利息、または安い金利でお金を貸し付けた場合、一般的に取るべき利息と、実際に受け取った利息との差額があったとしても、寄付金にはなりません。

 

5.自社製品を被災者に提供した場合

 会社が、不特定、または多数の被災者を救援するために、緊急に自社製品を提供した場合、それにかかった費用は、寄附金、または交際費には該当せず、広告宣伝費として、経費になります。

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