新着情報
2014.02.12
会社にとって、一番大切なのは、事業資金です。
もちろん、社長や社員のやる気、理念、そして、ビジネスに対するアイデアも重要です。
それでも、あなたの会社が商品やサービスを売るためには、事業資金が必要となるのです。
「お金をかけずに、あなたの会社の売上を上げる方法」
というキャッチフレーズをよく耳にしますが、半分は正解ですが、半分は間違っています。
お金をかければ、会社の売上が上がるわけではありません。
でも一方で、お金をかけなければ、やはり売上は上がっていかないのです。
そのときに、無理にお金を使わず、できるだけ少ない事業資金で売上を上げる努力が必要になります。
あなたの会社の売上が十分に上がって、儲かるまでには、かなりの時間がかかります。
あなたの会社が、今まで何十年もビジネスをしてきたとしても、新しい商品やサービスを次々に提案して、新規の顧客を獲得しなければ、売上は下がってしまいます。「新しい」と言っても、今までの商品やサービスをちょっと工夫したり、関連したものにはなるでしょう。
ただ、新規のお客さんを獲得するまでの時間はかかるのです。
「会社の売上が下がってしまい、資金繰りが悪化してしまった。だから、今すぐに売上が上がるやり方を教えて欲しい」
と相談に来られる方もいます。
もちろん、売上を上げるための新しいアイデアを出すことはできますが、売上は少しずつ上げていくしかないのです。
広告を出したとしても、それでお客さんになってくれる人数は多くありません。そのお客さんが、口コミで新しいお客さんを連れてきてくるまでには、時間がかかります。
今はソーシャルネットワークもあり、すぐに口コミが広がるのでは?という意見もあります。昔に比べれば、口コミの速度は早くなったと思いますが、それでも時間がかかります。
実は、そのことを理解せずに無駄づかいをして、事業資金を使い果たしてしまう会社が多いのです。
やっとお客が増えて利益が出始めたころに、事業資金が底をついて立ち行かなくなった会社をいくつも見てきました。
だからこそ、事業資金をできるだけ温存して、会社は同じ商品やサービスを長く売り続けることが大事なのです。
それでは、具体的に、どうすればよいのでしょうか?
①
固定費はかけない
毎月の固定費の支払いは、できるだけ小さくすることです。
固定費とは、売上に関係なくかかる経費のことです。
賃貸料、電話料金、サーバのレンタル料、水道光熱費などです。
今や電話料金であっても、代理店や契約方法によっては、かなり安くなります。サーバのレンタル料も、データセンターの会社を乗り換えても、サービスはほとんど同じです。
一方、売上に応じて上がる経費を変動費と呼びますが、だいたいの会社で、売上原価と広告宣伝費がそれに当たるはずです。こちらは、売上を上げるために必要なもので、事業資金を投資しなければいけません。
たとえば、売上原価を下げるために、品質が悪い商品を売れば、口コミは広がりません。ただ、赤字になるぐらい品質を高くしてしまう会社もありますが、やり過ぎは良くありません。無駄な投資は避けるべきです。
あなたが家を買うときに、一生の買い物であったとしても、自分が支払う金額と見合いで、ある程度は妥協するはずです。それでも満足するのです。
競合会社と比べて、できるだけ高い品質を保てばよいのであって、赤字になってまで事業資金を投資すべきではありません。
とにかく、何が固定費で、何が変動費なのかは、あなたの会社の業種によって変わってきます。不動産の仲介会社のように歩合制の社員がいれば、その給料は変動費になります。
②
売上と仕入や外注費のタイミングを調整する
社員の給料は支払いの時期を変更することはできません。
給料の支払いは少しぐらい遅れても大丈夫と言うかもしれませんが、社員は辞めてしまいます。
設備や不動産に投資するならば、決済の時期は変更できません。
多額の設備や不動産に投資しなくてもよい業種が多いかもしれませんが、投資が全くないビジネスは参入障壁が低くなります。新規事業者に参入されて、競合が激化します。
消費税や法人税の支払いも、時期を変更できません。
税務署と交渉できると考える人もいますが、利子税もしくは延滞税がかかります。かなり高額なので、これをあえて選択する必要はないでしょう。
とすれば、上記以外の売上、仕入、外注費に関しては、入金の時期、支払いの時期を交渉することで変更できます。
とにかく、仕入や外注費を支払ったら、できるだけ短い期間に売上が入金されるようにすることです。
この話をすると、うちの会社は中小企業で、お客さんは上場会社ばかりで、どうしてもこちらの立場が不利なんだと言う社長もいます。
それならば、売上の利益率はよいはずです。優良な上場会社であれば、そんなに無茶は言わないでしょう。利益があるならば、銀行がお金を貸してくれるので、事業資金には困りません。
もし利益率が悪くて、支払も遅いならば、強く交渉すべきです。絶対に無理と言われたら、取引を断るぐらいの意気込みが必要です。
会社は事業資金がなくなれば、倒産します。そこまで行かなくても、事業資金が不足していると、新しいビジネスができません。あなたの会社にとってよくないお客さんは、そこがどれほど有名な会社であっても断るべきです。
そもそも、あなたの会社の事業資金が滞ったり、倒産されると困るとお客さんが考えてくれているならば、入金時期の交渉ぐらいは応じてくれるはずです。
実際に、売上1兆円の上場会社が、たったの5人の会社の要求どおり、支払いのサイトを変えてくれたこともありました。単に、今まで交渉してこなかったからという理由だったのです。
「入金を早めて欲しい」と交渉すると、「事業資金が苦しいんだな」と感づかれると言う社長もいます。でも売上が下がると事業資金は不足しますが、売上が上がり過ぎても事業資金は不足するのです。だから、それは交渉したくない言い訳にしかすぎません。
別に高く買って欲しいと交渉するわけではなく、代金の支払いをちょっと早めてもらうだけなのです。
③
人を雇っても仕事は増えない
優秀な人材を雇えば、売上が上がると勘違いしている社長もいます。そんなに優秀ならば、自分で起業して儲かるはずです。
新しい商品やサービスを企画して提供しなければ、売上は上がりません。
その企画を考えるのは、社長である、あなたがやるしかありません。
企画が完成したら、現状の社員でちょっと進めてみて、仕事が多いと分かったら雇うことになるのです。企画が当たってから、指揮する社員、営業部隊として動く社員、バックアップで書類を作成する社員を雇えば十分です。
人を雇えば、新しい仕事が増えるのではなく、仕事が多くて足りなくなったら、人を雇うということです。
先ほど説明した、不動産の仲介会社の歩合制の社員であれば、売上に連動する経費だから、どんどん雇ってもよいのでは? と考えるかもしれませんが、それもダメです。
歩合制の社員でも増えれば、固定費である事務所も広くしなければいけませんし、椅子や机、パソコン、電話などへの投資も必要です。
それでも、不動産の仲介案件を取ってくれば手数料が入るので、そこから経費を支払えばよいと言うかもしれません。
それならば、歩合制で雇っている不動産の仲介会社はたくさんありますから、どこでも儲かるはずです。
ところが現実は違います。
やはり、社長が、たとえば飲食店の賃貸の仲介を専門にするなどの企画を作って、自分たちの会社のサービスにしていたり、築20年以上の古いビルをリフォームして仲介する企画を作っていたり、何かしらの特色のある不動産の仲介会社しか儲かっていないのです。
それらの不動産会社も、社長が企画を作って、実際に飛び込み営業してみたら、かなり反響があった・・・それでは歩合制の営業マンを雇ってみるか・・・となったはずです。
社長が作った企画に、どれだけの需要があるのか、売上を上げるポテンシャルの大きさで、雇うべき社員の数が決めることです。
社員が多いという理由で仕事が増えるわけではなく、仕事がなければ、単純に固定費が増えるだけなのです。
④
信用金庫や地方銀行も付き合っておく
開業当社は、日本政策金融公庫などの制度融資を利用していますが、だんだん、儲かってくると、銀行の担当者が営業に来るようになります。
最初は地方銀行と付き合って、5000万円、1億円と借入できる枠が増えていきます。
すると、それを聞きつけて、都市銀行の担当者が営業にやって来ます。
都市銀行は、地方銀行や信用金庫よりも資金の調達コストが安くなっています。あなたがお金を預けている銀行は、都市銀行ではないですか。何も営業しなくても、利息があれほど低くても、都市銀行にはお金が集まってくるのです。
そのお金(正確には自己資本比率があるので、預金してもらった何倍ものお金)をもとに、貸し付けるのですから、貸付金利も地方銀行に比べたら安くなります。
「そうか、俺の会社も都市銀行が営業にくるほど、有名になったのか。金利も安いし、地方銀行には悪いけど、すべて都市銀行に乗り換えてしまおう」と、あなたが思ってしまっては、ダメです。
都市銀行は一度に多額の資金でも出してくれますが、それだけリスクを取っていることにもなります。そもそも営業しなくても、たくさんの会社がお金を借りたいと申し込んできます。
そのため、あなたの会社の業績が悪くなったら、突然、手のひらを返したように、回収しようとします。全国に支店があり、いちいち、地元の評判も気にしません。
一方、地方銀行や信用金庫は違います。
営業できるエリアも限られていて、その地域での評判もありますし、最後まで、あなたの会社の面倒を見てくれます。
都市銀行と付き合うなと言っているわけではありません。
一度に多額の資金を調達するとき、海外へ送金するとき、インターネットバンキングのサービスも充実しています。
地方銀行や信用金庫との関係は切ってはいけません。
⑤
いつまでも成功し続ける事業はない
あなたの会社が銀行からお金を借りることができて、事業資金に今のところ困っていないとしても、現在の売上も利益も稼ぎ続けることはできません。
どんなに優秀な会社であっても、商品やサービスは廃れていき、新しい商品やサービスを提供するのですが、そのすべてが当たるわけではありません。
だから、どんな会社でも売上が一時的に下がることも、利益が赤字になることもあります。そのときでも事業資金が不足しないように、できるだけ会社にお金を貯めておくことです。
今まで、いろいろな会社の再生をお手伝いしてきましたが、あまりに会社にお金がないと、助けてくれる人に依頼することも難しくなってしまいます。
再生のスキームを作って、金融機関などの話を持ち込んで、承認されるまでにも時間がかかるのです。
社長が、その再生を実行するための資金調達に動くとなれば、本末転倒です。
実際に、20店舗の居酒屋を運営していた会社では、社長が夜中に車で、毎日、すべての店舗の売上をレジから現金回収して、翌日の支払いにあてていました。これでは、新規店舗を出したり、赤字の店舗を閉鎖するための戦略を練ったりすることは不可能です。
再生のミーティングをしていても、社長が疲れて寝てしまうのです。
結局、この居酒屋は時間切れとなり、倒産しました。
また、無理にでも、お金を借りるために、事業資金をコネで調達してくるというコンサルタントに依頼した会社もありました。
でも、そんな無理をしてお金を借りても、結果的に、会社が再生できることはありません。
社長が自分の意識を変えて、事業資金を節約して、新しい企画を作り、何にお金を集中させるべきかを考えなくてはいけないのです。
今の事業を続けるだけでは、売上が戻るはずがありません。
私もそうですが、年齢が高くなってくると、自分の意識と態度を変えることができなくなります。
でもそれをやらなくてはいけないのです。
もう一度、あなたの会社の決算書と通帳を見てください。
月末を過ぎても、事業資金に余裕がありますか。
もしギリギリであれば、事業資金を貯めるために、今すぐに動いてください。